【記者会見実施】日本初の新規事業「医療的ケアシッター ナンシー」事業内容発表会を行いました
2019年7月31日、フローレンスでは2年ぶりとなる新規事業、医療的ケア児や障害児を専門にお預かりする「医療的ケアシッター ナンシー」の発表会を、厚生労働省にて開催しました。
記者会見では、フローレンス代表 駒崎のほか、医療的ケアが必要な金澤菜生ちゃんと母親の裕香さん、「医療的ケアシッター ナンシー 」の看護師 小田結紀、この事業を立ち上げるために助成金や寄付を下さった、ウォルマート・ジャパン・ホールディングス株式会社 並びに合同会社西友 執行役員 SVP(シニア・バイス・プレジデント)CHRO(チーフ・ヒューマンリソース・オフィサー)黒川華恵さん、一般財団法人村上財団代表理事 村上絢さん、個人寄付者として佐俣アンリさん(ANRI代表パートナー)、松本恭攝さん(ラクスル株式会社 代表取締役社長CEO)が登壇しました。
近年、少子化が加速する一方で、「胃ろう」や「たんの吸引」、「人工呼吸器」など、日中医療的なケアを必要とする医療的ケア児や重症心身障害児は増えています。そのため、こういったお子さんとその家族を支えるべく立ち上げた日本初の新規事業に関心が集まり、15社もの報道関係者の方々にお越しいただきました。
医療的ケア児の成長を見守り、親御さんに休息の時間を
フローレンスは、5年前に「障害児保育園ヘレン」を開園、その翌年に「障害児訪問保育アニー」のサービスを開始しました。
卒園していく子どもたちを見送る中で、医療的ケア児のご家族が抱える問題が、保育の外にも多種多様にあることがわかってきたため、看護師が各ご家庭に訪問し必要とするニーズにお答えできる「医療的ケアシッター ナンシー」を立ち上げることとなりました。
医療的ケア児とご家族の現状 ナンシーに寄せる期待
記者会見には、障害児訪問保育アニーを利用する、金澤裕香さんと娘の菜生ちゃんにもご登壇いただきました。
金澤さんのコメントをご紹介します。
今年6歳になる娘の医療的ケアは1時間に2~3回必要です。
私たち両親や訪問看護師さん以外に医療的ケアができる人はおらず、日常のほとんどのケアを私が担当しています。
そのため1年前にアニーの利用を開始するまでは、私が娘と離れられる時間は訪問看護の看護師さんが来てくれる90分と、週2回娘が通所に通っている時間のみでした。私一人で娘とお出かけすることも難しく、ほとんどの時間を家で娘と2人で過ごしていました。
この生活を送る中で、私は主に2つのことにとても困りました。
1つは、私の睡眠時間をはじめとした、家族一人一人のプライベートな時間の確保です。
毎日の生活がどうしても娘中心になってしまい、私自身のまとまった睡眠や外出時間はほとんど取れていませんでした。気がつけば周りと疎遠になって置いてきぼりにされたような寂しい気持ちがしていました。
2つ目は、仕事です。
私は娘の病気発覚を機に以前の仕事を退職していましたが、もう一度仕事をしたいという気持ちが強くありました。
社会的にはリモートワークが浸透しているように感じますが、スタートから完全在宅で娘の不安定な病状と両立できる仕事は中々見つかりませんでした。
昨年からアニーの利用をスタートし、私たち家族の生活は大きく変化しました。
アニーでは、週5日日中8時間、家に医療的ケアができる保育士さんが来てくれて娘の保育をしてくれます。日中安定して外出時間が確保できた事で、私が以前からやりたかった仕事を始めることができました。
また意外だったのが、保育をスタートしてから娘の発達・成長が凄まじいことです。
声をよく出すようになり、表情もとても豊かになりました。以前は一方通行のコミュニケーションが多かったのですが、今は意思疎通できていると感じることが多く、毎日がとても楽しくなりました。
そんな中で、今私たち家族の一番の課題は来年に控えた就学についてです。
私たちは、特別支援学校に進学予定です。医療的ケアがある私たちは、学校に付き添いが必要で、日中一緒に学校に行く必要があります。そうすると、今の仕事を続けることが難しくなってしまいます。
また、自主送迎や付き添いの問題で娘を学校に連れていけない状況になってしまった場合、今使っているサービスの多くは未就学の年齢が対象のものが多いことも心配です。
今まであったサポートがなくなってしまうことで、娘が人と関わる機会が減り、寂しく感じてしまうのでは……というのも心配しています。
そんな状況の中、今回、ナンシーの事業内容をお伺いし、まさに私たちが求めているサポートだと感じました。
訪問看護の時間とは別に、子どもを数時間預かってもらえる事で、お母さん達は自分の時間を確保できたり、仕事をする事ができる可能性があります。 私たち医療的ケア児の家族にとっては、この数時間が本当に貴重です。
また子ども達にとっても、新しい人との関わりを一つでも増える事で、日々の喜びや楽しさに繋がっていくと思います。学校の補習として利用も可能ということで、子どもの学びの機会を増やす貴重な時間になると感じています。
医療的ケア児は今全国に18,000人以上存在します。その子ども達の多くは、保育や福祉の面で行き場がなく、ご家族が対応している現状があります。
また、子ども達も学習やお友達との交流の時間が十分に確保できていません。
ナンシーのような今までにない新しい事業が社会に浸透し、医療的ケアがあっても、お母さん達が当たり前に仕事や自分の時間が確保できる。
子ども達も子どもらしい生活が送れる。そんな社会作りの一歩となる事を期待しています。
ナンシーを通してあたらしいあたりまえを 支援企業や個人寄付者の思い
「医療的ケアシッター ナンシー」は、初年度の初期投資として2000万円が必要でした。看護師採用・育成、バックオフィス運営体制構築のためのスタートアップにかかる費用です。
2000万円を合同会社西友「2019年度社会貢献活動助成プログラム」、および一般財団法人村上財団、個人寄付者の佐俣アンリさん、松本恭攝さんから大きな支援を得て、事業スタートの目処が立ちましたことを心より感謝しております。
ご支援をいただいた企業の皆さんのコメントをご紹介します。
【ウォルマート・ジャパン・ホールディングス株式会社 並びに合同会社西友 執行役員 SVP(シニア・バイス・プレジデント)CHRO(チーフ・ヒューマンリソース・オフィサー)黒川華恵さん】
合同会社西友とフローレンスさんとの付き合いは2011年からです。
今回も非常に難しい問題に、フローレンスの皆さんが熱い情熱を込めて取り組んでいくということで、私たちも支援ができて非常に嬉しいです。
私たちの事業はスーパーマーケットで、お客様の7割が女性。育児をするお母さんたちがお客様として多いです。そういった方たちが私たちの事業を支えてくれ、戦力にもなってくれており感謝しています。そのような気持ちもあり、フローレンスさんと今後もお付き合いを続けていきたいと思い、今回支援をさせていただきました。
【一般財団法人村上財団代表理事 村上絢さん】
フローレンスの事業で初めて支援をしたのは、障害児保育園ヘレン経堂の開園への寄付でした。
その後ヘレンに何度かいかせてもらったのですが、子どもたちがすごく元気ではつらつとしていて、先生たちも創意工夫をしておもちゃを手作りしたり、卒園した保護者の方が寄付をしたり、すごく園全体が成長していると感じました。
私の息子も進学を考える時期になり、ヘレンを卒園する子どもたちはどうなるのかと気になっていました。そんなとき、ナンシーの話をいただき、これはぜひ支援をさせていただきたいと思いました。
【佐俣アンリさん(ANRI代表パートナー)】
全ての子どもが幸せになる権利があると思っており、フローレンスが挑戦することは、社会的に一番難しい課題に直面している子どもたちを幸せにできることです。
また、難しい課題に挑戦することに対して、私たちのような支援者がたくさん集まるような世の中になってほしいという思いもあり、参加させていただきました。
【松本恭攝さん(ラクスル株式会社 代表取締役社長CEO)】
フローレンスは、国は社会保障の全てを見きることはできず、そこからこぼれてしまう人たち、人数としては小さいが、直面している当事者としては非常に大きな課題を解決していこうとしています。
社会をよりよくしていくという活動に対して、私自身も同じ思いをもっています。
同じ船に乗せていただき、世の中の課題を解決する景色を見たいという思いで参加しました。
記者会見後、日経新聞、東京新聞、ハフポスト、アンリーシュにて、ナンシーの事業に関する掲載をいただいています。
まだまだ医療的ケア児の実情を知らない方々も多い中、メディアの方々の発信により、今後も医療的ケア児の置かれた環境や必要な支援について認知度が広まり、こういったご家族を支えていける社会にするために、私たちは今後も奔走していきたいと思います。
8月1日 ハフポスト日本版:https://www.huffingtonpost.jp/
8月1日 アンリーシュ:https://unleash.or.jp/news/2019/08/5453/
8月1日 東京新聞 朝刊
8月1日 日経新聞 夕刊
医療的ケア児の家族を支える看護師を募集しています
今回、多くの支援者の賛同を得て、9月1日のサービスインが可能となりました。
しかし、この事業に賛同し働いてくれる看護師さんがいなければ多くのニーズに応えていくことはできません。
現在、サービスイン前のテストケースとして何名かのお子さんにサービスを提供しています。
親御さんからいただいた喜びの声です。
「ナンシーに来てもらうことで、きょうだい児にかける時間を作れるようになりました」
「家族のバランスがとれるようになりました」
「家族みんなの生活にゆとりができました」
「夫が仕事から帰宅する前に、安心してお風呂に入ったり夕食の準備ができるようになりました。」
「喘息の発作中でも仕事を1度も休まずに、行くことができました。」
訪問看護の新しい形として、私たちと一緒に医療的ケア児や障害児のご家族を支えていきませんか。
また、フローレンスはこうした民間も行政も取り組めていない社会課題を可視化し、解決モデルを立ち上げて全国へ広げています。親子の笑顔をさまたげる社会問題の解決スピードをあげるために、ぜひ皆さんのアクションを託してください。